『音楽プロデューサーとは何か』寺本幸司


澤チエさんよりご主人が本を上梓されたと聞いて、その場でアマゾンからクリックした。何の本かも知らず、著者の寺本幸司氏のことも知らずに。


翌朝早くも本が届く。『音楽プロデューサーとは何か』という題名。「え~、チエさんのご主人って音楽プロデューサーなんだ。しかも有名な人らしい!」サブタイトルに、「浅川マキ、桑名正博、りりィ、南正人に弔鐘は鳴る」とある。桑名正博は知っている。最近亡くなったよね。でも曲はよく知らない。たしかアン・ルイスと結婚して離婚したっけ…という程度。昭和42年生まれの、芸能関係に疎い私。


隣人が家にやって来たので(その日はうちの人の誕生祝いをした)、「お友達のご主人が書いた本だけど、面白そうですよ」とちょっと自慢気に見せたら、彼女、「浅川マキ、好きだったわ~」と言う。アップルミュージックで検索して、浅川の曲をかけてみる。うわ~渋い、カッコいい!還暦を迎えたうちの人は、「りりィは知ってる。あの有名な曲、なんだっけ」。また検索してみる。曲に合わせて隣人と彼がハモる。「私は泣いています、ベッドの上で~♪」なんか聞いたことあるような気がする!


そして、実際に読みだしたら、寺本氏の文章がうまくて面白くて止まらなかった。歌手の発掘、売り出し、成長の背景に、こんな愛に溢れたプロデューサーがいたとは!歌手名や曲名が出てくるたびに、アップルミュージックやYouTubeで聴いてみる。(かつて元上司が書いた戦争関連の本にでてくるたくさんの軍歌を同様にして聴き漁ったことがあったが、それに比べて、今回はなんと楽しかったことか!)寺本氏がプロデュースする女性歌手には共通点が感じられた。どことなくアンニュイで辛口の独特な声と雰囲気を持っている。イルカだけはちょっと違ったが。中学校の合唱祭の課題曲が「なごり雪」だったので、その曲だけはよく知っていた。彼女にこの名曲を歌わせたのが寺本氏だったとは!素晴らしい!!私の抱いていたイルカのピュアなイメージが本物だったことも、この本と他の曲からもよく分かった。裁縫をしながら彼女のアルバムを一日中聴いた。


桑名正博のかっこよさにもしびれた。YouTubeでみると若い時も年をとってもかっこいい。松田聖子を聴いて育った私にとって、恋愛観を形成したといってもいい松本隆が、桑名の歌詞を作っていたのには驚いた。男性の恋も書けるんだ(当たり前か)、しかもセクシャルバイオレットNo.1!でも一番気に入った曲は、桑名が書いた「夜の海」。松本隆の、映像が浮かぶようなプロの詩ではなくて、かなりありきたりの内容なのだが、桑名が歌うと実に魅力がある。下田逸郎の曲がいいのだろう。ギターで弾いてみたらABCDm7の簡単なコードでほぼいけるのに、なんてステキなんだろうと、うっとりしてしまった。(今日浄化槽清掃の業者が来たのだが、マスクを取ったら晩年の桑名にそっくりで、他社とあいみつを取ろうと思っていたのに、即決してしまった!)


寺本氏は、寺山修司や筒美京平をはじめとした名だたる著名人と一緒に仕事をし、有名歌手を輩出するような人なのに、影の人に徹して、わがままなスターに翻弄されながらも、彼らの信頼を裏切らず、温かく見守り続けるという、たいへんな人格者である。さすが、チエさんの旦那さんだ。チエさんも彼にスカウトされた人だが、あまりにかわいかったので、お嫁さんにしてしまったのだろう、その辺のいきさつは書かれていなかったが。


 私は、りりィさんの曲は知らなかったが、女優さんとしての作品はけっこう観ていた。寺本氏は逆に彼女の映像は、あえて観なかったそうである。「わたしを見つけてくれて、ありがとう」という一行のメールが遺書となったというくだりには、じ~んときた。そんな影の人が、私たちに夢をくれるスターを見つけて育てていたのね。寺本さん、ありがとうございます!!!


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