(2016年3月1日記)
NHK特選見放題パックによって、ドラマの次に見たのがNHK特集の歴史・文明シリーズだった。私はいつでも文明の興亡というものにとても興味がある。あれだけ栄えたものがいつか滅びる、この公式がおもしろい。
そしてそこには権力と宗教と民衆と貿易と戦争が必ず絡んでいる。つまり誰にでもある欲望、このかなり人間的というか動物的な本能が先ずあって、それが強烈に強い人物が一人出てきて、その人を核にした勢力圏が生れる。たとえば、アレクサンドル大王、玄宗帝、チンギスハン、織田信長、毛沢東、スターリンなどなど。
そしてその人は民衆を抑えるために宗教を利用する。 つまり強引な布教による人心掌握、あるいは既存宗教に悪の根源があるとこじ付けての静粛といった形で。宗教は普通の欲望、本能の権化のような権力という欲望より、ある意味もっと強い欲望、裏を返すと無欲といった自己を越えた次元の、世界的平和を望むような、べつの人物が核となって生れる。たとえば、仏陀、イエス・キリスト、ムハンマド、空海、道元。
民衆の心をつかむのは強権と宗教だ。権力者はこの二つを利用して、勢力を拡大する。他の領土を攻める、戦争を始める。
その戦争で命を失うものも多いが、それによって潤うものもいる。そもそも戦争は金がかかる。その膨大な金を調達する手段が貿易である。他者に先駆けて異国へ行き売れそうなものを売ったり買ったり、あるいは安い人材を集めて作らせるだけの勇気や才覚のある商人が金をもうけて、さらに自分たちに有利になるように権力者に取り入る。
人類は戦争より初めに貿易を始めていたのかもしれない。自分の土地が持つものを他の土地の持つものと交換する貿易(物々交換)は古くからあり、それがもとで戦争が起きたのかもしれない。シルクロードの以前から、海路を使った貿易はローマや三内丸山遺跡でもその証拠が出ている。
欲望の強烈に強い一人の人物、それに群がる民衆、人間を救いたいという高尚な目的から生れた宗教と、それを利用する権力者が起こす周辺国との争い、その背景にある貿易でうまれる膨大な富。
大体文明の興亡にはこの5つのバランスが関係している。
文明は人間が発明したものだが、未来永劫続くものは一つもない。
唯一中国だけは、民族の違いを超えて一つの価値観を共有しながら文化圏を維持しているという。
それは唐の時代にうまれた「中華思想」によるものだそうだ。唐は、それまでの黄河や揚子江に恵まれた「中原」とは違う地域に発生した小国だった。しかしあえて自らを「中原」と呼んだことで、中国ではいつの時代も権力の中心が世界の中心である「中原」だという発想が生れた。
以来、中国人はどこにいても、どの民族が権力を持とうとも、「中国人」である限りは、世界の中心にいるということになったらしい。その他の国は東夷、南蛮、北狄、西戒なのだそうだ。
戦後、米国の子分になった日本人。米国に反発するなんて考えにくい国で育った私は、中国の欧米に屈しない態度を見ると横柄に見えたりしていたが、考えてみれば、歴史の厚みでは赤ちゃんのようなアメリカに対して、中国(やロシア)が日本のようにぺこぺこする必要はないのだ。ましてや中華思想のもとでは、日本に対しても上から目線に出たり傍若無人に見える態度をとっても、驚くことではないのかもしれない。
中国やロシアや北朝鮮が、日本の常識から外れたような国際的言動をするように見えるのは、私たちがむしろアメリカに洗脳されているからかもしれない。
だって、京都人はいまだに日本の中心は京都だって思うらしいから。徳川家康だって征夷大将軍だよ、京都からずっと東の、関東や東北の夷人を滅ぼす役職なんだから。この辺の武士はむかし東夷(あずまえびす)と呼ばれたらしい。京都から見れば東京は野蛮で未開な地、田園都市線上に住む人からみたら、板橋みたいなものだ(?)。
一時的に日本が先に近代化し、経済大国になったからって、根本的には中国人にとっては、昔の冊包国、いってみれば服属国なんだ。歴史の長さからしたら、日本の繁栄なんて短いものだし、日本国の興亡で見れば、すでに終わりかけている時期にいるのかもしれない。
すくなくともこれまでの神社仏閣を基本とした宗教的な価値や儒教的な家族制度をベースとした日本の価値は消えようとしている。この二つが日本人の根幹を成してきたが、敗戦とともに徐々に消えうせている。
戦後の日本人は逆境ゆえに底力でがんばった。そして豊かになった。ゆたかに育った世代にたくましさもないし、かつてあった根本的な価値観もない。
残っているのは日本人の器用さ、柔軟さ、そして狡猾さ。人がいいだけに右にも左にもいける。理想がないから、大勢に流されるときは狂気のレベルまでいける。宗教がないから、あたらしい考えも受け入れることが出来る。
これからの国際社会にはこんなほうがいいのかもしれないけど??
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